3DCGモーション講座

こんにちは。
株式会社ウインズの3Dキャラクターアニメーターです。
ここでは、自分なりにまとめたキャラクターアニメーション(主にインゲームモーション)を作成する際に役に立つ5つのコツを解説します。
アニメーションの解説書のような、しっかりした系統立てこそしていませんが、その分わかり切っていることをいちいち書くようなわずらわしさは排除しました。
また現場で練り上げたものなので、すぐに役に立つものであるのは確かです。

それは以下の5つです。

1. 観察・分析・再現
2. ポージング
3. 腰の動き(重心移動)と軌道線(アーク)
4. タメツメ、メリハリ
5. 力の伝達、作用反作用

では、一つずつ説明していきます。

1. 観察・分析・再現

文字通り、作ろうとする動きを、調べて、見て、分析し、それを再現することです。
当たり前のように聞こえますが、意外とできていない、と言うより“しない”人が多いです。
そして調べることをしない人は、言ってしまえば想像でやろうとしているわけですが、それは人の動きを頭の中のみで完璧に組み上げられる天才でない限り無理です。可能な限り、作業に入る前に調べるようにして下さい。
ある凄腕アニメーターさんは、「調べるのが7割、実作業が3割」と言っていました。
実際、徹底的に調べていればビジョンが見えているわけですから、作業も最小限で済むわけで、結果的に効率的と言えます。

動きを調べるということの例としては、YouTubeを漁る、自分で演技をしたものをスマホで録画する、該当する漫画・アニメ・映画・スポーツを見てみる。またはそれらの複合技などもアリです。

あとはそれを3Dツール上で再現すればいいわけです。
(漫画家・東村アキコ先生は「写真トレースおおいに結構 やっちまいな」と主張されていますが、同感です。問題になるのは他者の著作物を盗用しているケースでしょう。)
それでもできないのであれば、「観察」が足りていないと考えてください。
デッサンで言えば、対象をきちんと見ていないようなものです。まずしっかり見なければ上手くは描けません。

アニメーターはキャラクターになりきり、状況を想像して、演技を考えたり膨らませたりする「役者」としての能力も求められますが、それもこの「観察・分析・再現」に含まれます。
CGアニメーターにありがちな悩みとして「重みが出ない」というものがありますが、それも自分で重そうに動いてみて、しっかり観察すれば、だいたいは解決するものです。

2. ポージング

いくら「観察・分析・再現」でリアルなモーションを作っても、ポーズが良くなければ作品・商品として成立しません。
特にアニメ的な表現になるほど、ポージングも独特なものになります。
例えば「立つ」という行為一つ取っても、それは変わってきます。


左は何の感情もなく、ただ立たせただけのポーズですが、仕事でこういったポージングをさせることはまずありません。
真ん中のは「S字立ち」と言われているもので、日本の漫画・アニメではお約束と言ってもいいほどよく出てきます。
これをさらに強烈にしていくと、右のお馴染みのポーズになったりします。
これらは、作品のテーマ、キャラクターの性格、置かれている状況などで変化するでしょう。
要は立ちポーズ一つ取っても、いくらでもバリエーションがあるということです。

また、3DCGアニメーションはキーポーズ(アニメで言う原画の部分)から作っていくのが基本で、このやり方を「ブロッキング」、「ポーズトゥポーズ」と呼んだりします。

ちなみに、攻撃モーションで特に重要なのは、予備動作(Anticipation)、ヒットポーズ、フォロースルーです。この3つは確実にキーポーズになります。


剣を振る攻撃の場合、ヒットの瞬間は流れてしまいますので、必然的に予備動作とフォロースルーのキマり方が重要となります(ヒットの瞬間がスローになる演出もあったりするので油断はできませんが)。

また、セクシー系や萌え系にも、それはそれでコツがあります。
そういったことを全部解説することはできないので、やはり各自で良質な作品など、とにかく何でも吸収して、引き出しに入れておくことが大事です。
気に入った作品は自分でライブラリにしておき、いつでも引き出せるようにしておくと、なお良いでしょう(ライブラリ化はサイバーコネクトツーさんがオープンにしている情報から教わりました)。

3. 腰の動き(重心移動)とアーク(軌道線)

人間や動物の動きは腰から始まります。
3DCGキャラクターもHipsのリグは事実上階層の一番上にあり、たいへん重要です。私見ですが、3DCGにおいては腰の動きがクオリティの60%以上を握っていると思っています。
全体の動きが汚く見える場合、まず腰の動きを徹底して修正していくことから始めるのをおすすめします。
ウインズのアニメーターチームでは、腰が生き生きと動いていないことを「腰が死んでいる」と呼び、回避するようにしています。
(ちなみに、腰から始めて、足、胸、頭、腕と徐々に外側に向けて動きを付けていくやり方を「レイヤードアニメーション」と言います。当チームでは「ブロッキング」と「レイヤードアニメーション」を組み合わせるのが一番いいのではないかと考えています。)

ところで、腰を適切に動かすためには、重心移動も適切でなければなりません。
それを説明するために、ここで一旦、「歩き」のメカニズムを解説します。
普段、私たちは足のウラで支えられる範囲に重心を入れて立っており、重心が外れれば倒れてしまいます。
その重心が外れる際に、コケないように片足を出して支え、そこからさらに重心を外せば、次は反対側の足を出します。
そうして重心が外れて倒れる筈の状態でありながら、次々と足を送り出すことで倒れずに進むことができます。
私たちは意識こそしていませんが、実は人間は倒れながら歩いているのです(ロボット工学ではこれを「動歩行」と呼びます)。

図にするとこうなります。


腰の動きと重心移動の重要さがわかるかと思いますが、その上で、動きのアーク(軌道線)が綺麗であることも大切です。
アークが重視されるのは、主に3DCGキャラクターの中枢である腰と、あとはシルエットに関わる部分です。

アークを、剣による攻撃を例にわかりやすくすると、こういったものになります。


弧を描くように剣が振られています。これが乱れていると人間の目には汚く映ってしまいます。
これは真上から見たところのみですが、360度見られるゲームモーションであれば、当然、刃の向きの流れも含めて綺麗であることが求められます。
そのような末端が綺麗に動くためには、必然的に腰の動きが綺麗でなければ難しいということになるのです。

4. タメツメ、メリハリ

日本のアニメは(本当はフルアニメーションをやりたかったけど余裕がなかったので)1秒を8コマで表現し、そのために大胆なポージングとメリハリのある動きが発展しました(このあたりは歌舞伎の見得などの歴史的な文化も影響している・・・と思います)。
したがって、作品が日本のアニメ的であるほど動きがツメられ、誇張され、メリハリが効いてきます。
と言うか、それをしないと違和感が出てしまいます。見た目がアニメなのにヌルヌル動いてたら変ですよね(そういう作品もたまに見かけますが)。

また、リアル系の作品であっても、攻撃関係ではアニメーションをツメてメリハリを出すことが必要です。
なぜなら、リアルな動きはどうしても緩慢に見えてしまうものだからです。

5. 力の伝達、作用反作用

力は伝達していきます。
「投げる」という動きは、まず腰が動き、足が出て踏ん張り、それを軸にして体幹が回転し、肩、ヒジ、手首と力が伝達して物が投げられます。
これはパンチ、斬る、テニスやゴルフの振りなども基本的に同じです。

このように力が伝達していくのは力感を表現するのに大事です。また、これができていないと、結局はアークも綺麗にはなりません。

力の伝達は意識的か無意識的かでも変わってきます。
例えば何かを取ろうとするとき、手は明確に目的に向かって動きます。しかし歩いているときに振られている腕は無意識であり、振り子のような物理挙動になります。

また、3Dキャラクターアニメーションでありがちなミスに、ポーズとポーズの間が直線的に動いてしまうという点があります。
中割り(アニメで言う動画の部分)への意識が低かったり、手を抜いていたりするとそうなるわけですが、これはいかにも「CG臭い」動きで、PS2の時代ならいざ知らず、今やったら相当恥ずかしいものです。
これも「力は伝達するもの」という認識があれば避けることができるでしょう。

そして力には作用反作用の法則もあります。例えば、重い剣を振り終わったとき、その反動が体に返ってくるなどです。
そういった動きも、達人キャラであればその反動を手首やヒジを利用してうまく逃がしたりもするでしょうし、筋肉質なキャラなら反動すら力で抑え込もうとするかも知れません。反動をモロに受ければ大剣に不慣れなキャラという印象を与えることもできそうです。

このあたりは、「1.観察・分析・再現」を突き詰めれば見えてくることでもあります。理屈でよくわからなくなっても、見た目に戻れば人間は人間らしく動いているものです。
PCに張り付いているだけがアニメーターではありません。「役者」としてのスキルも磨いておけば必ず役に立ちます。

3Dキャラクターアニメーションは、外見(見た目・ポージング・演技)と内面(骨格・筋肉・関節・理屈)から攻めていくと、より良いものになるのではないでしょうか。

最後に、参考になる記事へのリンクを貼っておきます。

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